(認知症を支える家族の会)
<母の主治医について>
母が、言葉が出にくくなり受診したのは、母の家から徒歩10分ほどの脳神経内科クリニックでした。それ以来、同じ医師がかかりつけです。母の変化をずっとみてくださっています。
今年に入るまでは、母はひとりで受診していました。それから、夫や姉が同行するようになりました。私は、初めて9月に同行しました。
そこで驚いたのが、医師の前では、母がスムーズに話をしていたことでした。その医師は、母からじっくりと話を聴いていました。優しく穏やかな物腰や、母の目を見てうなずきながら話を聴く医師に、心からの感謝の気持ちが沸き起こってきました。医師としても、患者に質問をして、患者の状態の情報を得る問診は大切なことだと思います。しかし、医師が患者の話すことをじっくりと聴くことは、医師が情報を得るだけでなく、患者と家族の大きな安心感や信頼感につながるのだと身をもって体験しました。
医師は、「パーキンソン病かな」、「レビー小体型認知症かな・・・」「大脳基底核変性症かなあ」、と診断が出せずにいました。姉や夫から聞く、医師の診断への迷いを、一つ一つ患者家族に伝えることに、一時私は医師への不信感を持ってしまいました。医師しかできないこと、それが診断です。医師も迷い、あらゆる可能性を削除しながら、時に追加しながら診断をつけている経過を感じました。大学病院で検査を受けた今も、いまだに確定診断は出ておらず、診断の難しさをしみじみと感じました。
<再び、道で転ぶ>
9月、母が夕方の散歩中に再度転倒し、顔面血だらけで帰宅しました。父は驚き救急車を呼び、診察を受けました。顔面の外傷のみで、胸をなでおろしました。母の顔は腫れ、前額部や目の上は擦り傷だらけ。ほかはケガをしていなかったので、手もでず顔から転倒したようでした。
その転倒は、つまずいたのではなく滑ったのでもなく、足が突然出にくくなったことによるものだったと母は言いました。疾患による転倒でした。
次の受診で医師に伝え、脳の伝達物質であるドパミンを補充する治療を、再評価し、その薬を増やすことにしました。母は薬をのむと調子が悪くなると、元来薬嫌いでした。睡眠薬は階段から落ちるまでは飲んでいましたが、それ以外は、自然の養生法で対応していました。この薬に関しても、処方された分飲むと体調が悪くなると言い、半分の量をのんでいました。
医師と私たちから、効く量を飲む必要があること、頭の中で減ってしまった物質を補う薬であること、足が出にくくなることが改善する可能性があることを説明しました。すると、母は納得しました。その日から薬が増え、徐々に増やし、維持量まで達しました。
<訪問介護サービスの利用を始める>
人工透析に通う父が、主に家事を担うようになり数か月経ち、父も少し疲れがでてきたのでしょうか。ヘルパーさんにより、家事のサポートを受けることを提案すると、父も母もあっさりと承諾しました。
ヘルパー導入の話が進んだある日、「今までありがとう、これからは掃除をヘルパーさんにも頼むよ」と私にいいました。私が月に何回か来て掃除をしていることに、気をつかって掃除を頼もうと思ったのかもしれない、と気づきました。私が定期的に掃除していたことが、父と母は、自分たち以外の人が自宅の掃除をする、という日常になり、それを私以外の人が来ることへの抵抗感も同時に薄れたようでした。
<私たちのこれから>
姉、夫、妹、そして私で、公的サポートを受けながら両親をいつまで自宅で支えられるのか、それを考えています。父と母の希望はもちろん最優先すべきなのですが、近くにいる姉、車で1時間の私たちや妹、それぞれの立場や様々な状況でとらえ方が異なります。
姉は、「自宅で迎えるお正月は来年までかな・・・」と言っています。夫が施設の種類について質問してきたので、説明したら、機嫌が悪くなってしまいました。まず、「要介護」といわれても、「どのような状態かわからない」とのことでした。情報というのは、相手の知識や状況によって与えなくてはいけない、ということは十も承知でしたが、夫には一気に伝えすぎたようでした。日々、施設や、介護サービス導入について説明している私ですが、身内への説明はいまひとつでした。
そんな主観的な自分に気づき、身内の出来事には冷静になれないことを感じています。
「仲良く協力しあって父と母を支えようね」が合言葉の姉や妹との関係に感謝しながら、これから、様々なことが起こるでしょうが、時に客観的に自分を見つめながら、父と母を支えていきたいです。
※今まで3回、母や私たちに関する文章をお読み下さり、ありがとうございました。文におこすことで、母や私たちに起きている事が整理できました。文章を読んで下さった皆様と、このような機会を下さった、りんどうの会の皆さんに心から感謝申し上げます。
紅葉が美しい季節になろうというのに、コロナ禍はいっこうに収まる気配が見えません。皆様、お変わりなくお過ごしでしょうか。
先月号でもお伝えいたしましたように、電話相談は毎月第1土曜日の午後1時から4時まで、皆様からのお電話での御訪問をお待ちしております。今年は介護相談会、交流会、バス旅行がコロナ感染予防のため全て中止になってしまったため、皆様とお目にかかる機会がほとんどございません。コロナ禍で過ごす今、何ということのない日常のおしゃべりが、私たちの暮らしの中でとても必要なことだったと、実感しております。どんなことでも皆様がお話ししたくなられましたらご遠慮なくお電話をください。こちらからもお電話させていただくこともあるかと思います。インフルエンザの流行も懸念されます折から、お身体ご自愛下さいますようお祈り致しております。
ちくま新書「マンガ認知症」ニコ・ニコルソン、佐藤真一著 880円
漫画家ニコさんの認知症の祖母の介護体験記に大阪大学大学院で、老年行動学を研究している佐藤真一教授が解説を添えています。
母と2人で介護する祖母の不可解な行動に振り回される日常が漫画化。同時に佐藤教授が、祖母の思いや行動の意味を丁寧に教えています。マンガ、解説とも大変読みやすく、認知症を知るためのガイドブックとしても有効です。巻末に著者が読んで良かったと紹介されている参考図書のリストも役立ちます。
日脚がめっきり短くなり冬の足音が間近に感じられます。寒さが身に染みるようになり、いつの間にか吐く息がしろくなってきました。暖かい鍋が恋しい季節です。過ぎ行く秋を惜しみながら、毎日落ち葉の掃除に追われております。
マスク着用に手洗いそして滋養のある食べ物を召し上がって、夜はあたたかくしてお休みくださいね。インフルエンザの予防接種も始まっています。お体お大切にお過ごしください。a.y
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