(認知症を支える家族の会)
<夫のいらだち>
夫は母親の変化に、当初ついていけないようでした。ティッシュボックスがガスコンロ脇に置いてあると、「危ないじゃないか、こんなところに置かないで!」とティッシュボックスをなぜ母がそこに置いているのか考えたり、それを母がとりやすい場所に移動するなどせず、母を注意するのみでした。掃除もままならなくなっている状態も、母に注意していました。母は加齢によっても不注意になり、特に心身が変化している時でした。会うたびに自信がない表情が増えていき、表情が硬くなってきた母に会うことを私はつらく感じていました。それはきっと夫も同じだったのと思います。夫は昔と今の母に差があることに、戸惑い、それを苛立ちの感情としてあらわしていたのでしょう。夫にとって、尊敬して、大切に思ってきた母だからこそ、そのような感情も芽生えたのではないかと想像しました。
私はできなくなってきたことを、少しだけ先回りしてさりげなくサポートし、母が自信をなくす瞬間を少なくする工夫を、具体的に夫に繰り返し伝えました。
<料理上手の母の変化>
私は日々、様々な状態の高齢者の対応やサポート、環境整備などを仕事でしてきました。その経験と知識で、そして長男の妻という、少し心理的距離があったこともあり、母の変化を受け止め対応できていると思っていました。
しかし、がんもどきの煮物に、母が味付けにお酢とかりん酒を入れたときには、ショックを受けてしまいました。
母は、お祝い事には必ずお赤飯を蒸かして、南天の葉をあしらい重箱にいれ、黒ゴマと塩を炒って紙袋に入れ、風呂敷にすべてをくるみ、持ってきてくれました。赤飯はささげを前の晩に茹で、大きなたらいでザバザバとゆで汁を空気に触れるようお椀でかき混ぜ、冷まし、洗ったもち米と少しのうるち米を混ぜたものを浸しました。それを私に教えてくれました。天ぷらは大きなお盆を2つ用意し、山盛りにいろいろな種類を揚げました。そんな調理していた母の顔と、手つき、たくさんの母の作ってくれた料理が、一気に頭の中に浮かび、やりきれない気持ちになりました。
私は次の瞬間気持ちを切り替え、母が少し席を外したすきにすぐに煮汁を捨て、みりんや醤油を入れて味を調えて味見をしました。ガスコンロの下にいつも母は調味料を入れていました。そこにあったみりんや酒、しょうゆと同じような瓶であった、酢とかりん酒を、母は煮ものにサッといれてしまったのです。
そして、私はすぐにお酢とかりん酒の瓶を別の棚に移しました。母が煮物を作る材料だけ、ガスコンロ下の引き出しに入れました。
<少しずつ頼ることに慣れるために>
私は、サポートが必要なのに、それを受け入れない高齢者を数多く対応してきました。そんな方はほとんど、自立して立派に生活されてきて、日々丁寧に過ごされてきた方々でした。信念をもって生活してきたからこそ、サポートを受け入れるのは認知機能が低下すればするほど受け入れがたくなっていました。
そんな方々を見てきたので、私は母もリハビリは行ったとしても、生活支援はなかなか受けようとしないだろうなと考えていました。そんな考えもあり、まずは私が掃除をすることは受け入れてもらおうと考えました。両親に、両親自身以外が生活の場に入ってくる状況を受け入れてほしいと思い、母の変化がはじまってからすぐに、そうじに通うようにしました。実際、浴室の床は汚れがちでした。毎回大げさなお礼を言っていた両親も、続けるうちに慣れてきました。少しずつ範囲を広げ、冷蔵庫までたどり着きました。
そして、今月のある日、たくさんある洋服の整理を夫と父とですることになりました。子には迷惑かけたくないと言っていましたが、両親とも頼ることに慣れてきました。
今年初めに、コロナウィルスの感染者が出始めてから、もう9か月にもなります。
りんどうの会では外出自粛、密集をさけるということで介護相談会、交流会をお休みして参りました。会員の皆様にお目にかかる機会が無くなり、皆様お元気なのかとごようすが気になり、電話相談の折にこちらからお電話させていただくこともございました。そして会員の方々のお元気なお声を伺うことで安心することも度々でした。一人暮らしの方は、一日誰とも話さずに過ごされることもおありだとかと。今後は「相談したいことがある」という場合でなくても、「誰かにお話ししたくて」「実は、骨折して入院していましたが、退院しました」などどんなことでもお話しいただければ嬉しいです。
皆様からのお電話を、心よりお待ち致しております。
ぜひ電話相談をご利用ください。
高齢者の自動車運転について心配なご家族の方は多いのではないでしょうか。
警察庁は2019年高齢者ドライバーや家族向けに、「#8080(はればれ)」を開設しました。全国共通の相談ダイヤルです。この問題でお悩みの方は相談してみてはいかがでしょうか。(9/9 読売新聞に掲載 会員の方から教えていただきました。)
尊敬する会員の方との電話でのお話しの内容があまりに素晴らしく、参考になりましたので、その方にご了解いただきご紹介いたします。
その方は今年卒寿、しかし、背筋はピンと伸び、声ははっきりとメリハリがあり、実年齢とのギャップの秘密を探りました。
1、約40年前から体操教室に通う。(現在は毎週1回、約1時間半)
教室の指導者や仲間と楽しく過ごしている。
2、ボランティア活動に参加している。
現在はコロナで活動自粛中。しかし活動仲間と電話連絡している。
3、趣味の教室に月2回通っている。
4、あえて自炊している
少食ですが、種類多く食べるように心がけている。
生き方のモットーは「無理はしないでほどほどにする」
私は70歳、いくつまで生きられるかわかりませんが。この方のように積極的に体力維持に努力する。仲間と共に社会活動に参加する。調理や芸術活動で頭を使う。
これを続けて内面から若返るように「無理はしないでほどほどに」努力していきます。
皆様も若返ったねと言われる日まで1項目からでも実践しませんか。mm
木の葉も日一日と色づき、待ちに待ったさわやかな秋の訪れを感じております。長雨に猛暑とコロナ禍、今夏は忘れられない夏になりましたね。皆様はそんな中でも気を緩めずに過ごしていらしたと思います。マスク着用、手洗いなど習慣になったとはいえ、何も考えず暮らしてきた頃が懐かしいです。
朝晩はだいぶ冷えてまいります。お体お大切にa.y
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